伊藤ヒロ 先日の続きです。
6500万円で売りに出していたうちの物件が、
うちのちょうど前の工業道具屋さんが、
どうしてもほしいと言ってきたのであった。
しかも僕が提示した金額は8000万円。
それでも欲しいと言われ、
僕は知っている人に譲るのであれば、
良いのではないかと思い、また父に相談したところ、
父：「あんな奴にうちの土地と建物を売ることはできん！！！」
僕：「子供みたいなことを言ったって、これで全部借金が払えるんだよ！ありがたい話だとおもうよ。」
父：「わしが買った土地と建物だ！お前の好きにはさせんぞ！」
僕：「じゃあ、不動産屋に売って、残りの1500万円は自分で払えるの？」
父：「お前が払え！！！」
僕：「それ自分が作った借金でしょ？」
父との会話は、あー言えばこー言うで、話は永遠と平行線だった。
もう、こんなことも言ってられないので、
工業道具屋さんに買ってもらうように話を進めていった。
父はぶつぶつ言いながら、
最後には、「勝手にしろ！」と怒鳴って、
僕らが育ち、父も母も一生懸命に生活をし、
仕事をしてきた場所にお別れすることになった。
建物は4階建てのビルだったので、全て片付けるのは、
本当に大変だった。
要らないものはすべて捨て、
売れそうなものは友達に来てもらって、
買ってもらったり、ただで上げたり、
オークションに出したり。
特に印象的だったのは、
500万円ほどで購入した饅頭を通る機械をオークションで
取りに来れる人限定で出品したところ、
大分県のお饅頭屋さんが15万円で落札し、
トラックで大分からフェリーで大阪南港まで来て、
そこから高速道路で名古屋まで来ていただき、
取りに来ていただだいたり、
餡子を炊く直径1ｍぐらいある、銅鍋を機械から外し、
その銅だけを売りに行き、その銅が5万円で売れた事や、
木型や、道具を知り合いのお菓子屋さんに配ったり、
包装資材などもお金に変えたり、
そんなことをしながら片付けは進み、
父も母も自分たちが輝いた時もあった場所から、
退く寂しさとの葛藤もあったと思うが、
最後、父は母(おばあさん)の遺影を抱きしめながら
おいおい泣いていた姿は今でも僕の目に焼き付いている。
辛かっただろう。そして苦しかっただろう。
しかし楽しかったこと、嬉しかったことも沢山このビルと土地にあったし、
僕もこの場所で生まれ育ち、思い出はたくさんあったが、
最終日は、捨てるものを４F、３F、2Fから投げ捨てて、
ゴミの車、約30台分になったが、
全部捨てて、ビルをすべて片付けたのであった。
そして両親も市営住宅に移り住むことになり、
なんとか、片付けと引っ越しが終わったように思えたのだが、
その後、とんでもないことが起きてしまったのだ。
～～～～～～つづく～～～～～～～
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